内核痔根治手術③

痔日記シリーズ
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「はい、せーの!」

うっすらと聞こえた声と同時に体が揺さぶられ、

ぼんやりと意識が回復した。

 

手術台から、ストレッチャーに移動させられたみたいだ。

まだ目がしっかりとは開かないものの、

「手術終わりましたからねー。」と、看護師さんの声。

ゴロゴロと移動するストレッチャーの音と、流れる天井が見えた。

 

病室に戻ってきた。

長女がいた。

時間を聞いたら、とっくに16時を過ぎていた。

 

 

 

手術時間は、早くて15分、ほとんどの人は30分以内だと聞いていた。

手術直後は、麻酔が効いていて計算どころではなかったけど、

後でしっかり計算すると、軽く45分は経過していた。

 

 

麻酔が1時間程度で切れてくるはずだと聞き、

それまでは長女が居てくれるという。

安心する。

 

脚の感覚はあるが、ドーンと重たい感じのまま。

点滴は、左腕に。

お股には、尿管カテーテルと、

お尻には、カサカサとしたものが巻かれている。

「おかあさん、オシッコが勝手に出てきよる。」

長女の座る目の前のベッド柵に垂れ下がった尿袋に、カテーテルから尿が流れ込んで来るのが見えたらしい。

もしも、いつか来るかもしれない母親の介護を生々しく想像させてしまったのなら、とても申し訳ない。

元気でいることが、一番の子供孝行なのに。

 

 

1時間も経たず、脚に感覚が戻ってきた。

麻酔が切れてきたらしい。

術後3時間は、寝返りも打たず仰向けのままでと言われていたが、

麻酔が切れた途端、無性に体を動かしたくなった。

腰から下、脚全体がものすごくだるい。

膝の裏に丸めたバスタオルを敷いてもらうと、随分楽になった。

 

まだ何時間もこのまま仰向けで、

朝まで点滴と尿管カテーテル入れられたまま。

このままずっと居ても仕方がないので、娘には帰っていいよと伝えた。

 

 

娘が帰った後、少ししてからだ。

だんだんと、お尻?

いや、肛門…

そう。患部がズキズキしはじめた。

患部の麻酔も切れ始めたのだ。

 

 

ズキズキというか、

ズンズンというか。

ガンガンというか。

どれにも当てはまらないような深い痛み。

経産婦さんなら経験されてる方も多いかと思いますが、

あの、会陰切開と同じくらいだろう、と。

勝手に想像しておりましてん、私。

会陰切開も痛かったよ、たしかに。

でもなんだかんだ乗り越えたんで、まあ、余裕じゃねーかと。

子を産んだ母をなめんじゃねーよ、と。

場所的には、近くじゃねーか、

会陰も、肛門も、サクッと切っちゃってくれと。

(今回会陰カンケーないやろ。)

余裕のよっちゃん(古ッ)ぶっこいてたわけですよ。

 

それがよ。ね。

まあー、めちゃくちゃ痛い!

ちょっと想像軽く越え。

一周回って逆走するくらい痛い!

(逆走て、逆に痛くないんちゃう?逆にややこしいわ!)

またねえ、この中途半端な歳が邪魔するのよ。

若い子やったら、「痛いです~」なんつってナースコールしても、

大丈夫ですか~?で済むけども。

お年を召した方なら、「我慢しないでくださいねー。」て、

看護師さんもほっこりしてナースステーション帰っていくやろ。

なんかねー、どっちにも転べないさまよう50女ってカンジ?

(カッコよさげに言うなや!さまよい続けろ!)

たしかに、痛みで死ぬわけじゃないし、

死ぬ事以外は大抵のこと我慢できそうじゃない?

そんな緊急で死の淵に立ってるわけじゃないのに、ナースコールなんてねえ?

(ナースコール時限爆弾と間違えてない?)

そんなの50女の選択肢にひとつも入ってなかったのよ。ナースのコールが。

(だれかーー!入れてくれーー!)

秒ごとに増す痛みを、ひたッすら耐えたよね。

時々、「くっ…」とか

「んん…」とか、

あやしくも、エロくもない妖艶な吐息を病室にまき散らしながら。

 

 

どれくらい時間が経ったのかな。

点滴の様子を見に来た看護師さんが、

生汗びっしょりの私を見て、軽くのけぞってた。

「大丈夫ですか?痛かったら痛み止め出しますんで言って下さい。」

 

は、早く

お、教えて。

無駄に汗かいたよ。

「あの…ください。痛いです」

言えた!

「ですよねー。普通よりも倍くらい手術の時間かかってますし痛いと思いますよー。先生も大手術だったておっしゃってましたから。後で痛み止め持ってきますのでー。」

 

は、早く

お、教えて。

汗が冷えてきて、

寒いよ。

 

  

 

持ってきてくれた痛み止めをすぐに飲みました。

まだなにも変わりません。

「痛みがおさまらない時は、1錠追加してもいいですよ。」

追加しました。

まだまだなにも変わりません。

次は最低5時間後と言われました。

5時間経ちました。

もう一錠飲みました。

やっぱりなにも変わりません。

もう夜中の3時です。

 

 

9時の消灯の時に

「軽い睡眠薬です。これ飲んだらみんなぐっすり寝れますからね」

と、渡されたあの薬は、ただの飴ちゃんだったのですか?

 

隣のベッドのおばあさまは消灯後、のび太君並みの早さでいびきをかいておられ、

お向かいの方は、夢の中でなにかしら叫んでおられ、

ななめ向かいの方は、寝返りでベッドの柵にガシャンガシャンぶつかっておられ、

そんな中、

完全に、

一睡も出来ず、

朝がやってきました。

おはようモネ。

おかえりや!もう終わったわ!今日から新朝ドラのカムカムエブリバディや。見てないけども)

 

 

 

 

 

 

最後まで読んでくださりありがとうございます。

次回もお楽しみに。

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