まさかとは思っているでしょうが、実は実は、私、透明人間なんですか?前編

日常の話
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ちょっと聞いてください!

ねえ。

私って、この世に存在してる?

 

自分が生きてるって思ってるだけで、

ほんとは魂だけこの世にさまよってたりする?

なんて思った出来事が先日ありまして。

 

 

ちょっくら、口座にね、入金しとこって、

自宅から一番近いドラッグストアの入り口にあるATMに並んでた時の事ですよ。

狭いドラッグストアの入り口に、

ATMの機械は、1台しか設置されておらず、

男性が操作している後ろに立って待っていまして。

 

よく、床に足のマークついてますよね?

最近では、蜜を避けて、間隔開けて並んでくださいって聞こえてきそうな足と足。

その、足マークを確認するべく下を向いてたんですよ。

うん、ここね。なんつって、

足マークの上に、立って。

そしたらですよ。

私と、前の男性の間にスッと、入って来た。

なんか、おばちゃんが。

 

下向いてたんで、ちゃんと顔見てなかったけど、おそらく私と同年代のおばちゃん。

自分もしっかりおばちゃんだが、服装と体格の背中ぜんぶでオバちゃんを表現してる。

オバちゃん、私、見えてる?

まるで私の存在がなかったかのように、

その表現力抜群の背中が、前の男性をしっかり隠してる。

今は私の男よ、見ないで。って、完璧なディフェンス。

え。

前に居た殿方、いつから私の元彼だったの?

それとも記憶にないけど、いつぞやのワンナイトラブなお相手さんだったりする?

私が本命、浮気相手はあなたのほうよ!

って、背中が私を泥棒猫扱い、

断固拒否なわけです。

 

って、さー。

私、並んでんですけど。

こっちは、しっかり足マークの間隔保ってんすよ。

 

まあね、

なにか事情があってお急ぎかもしれないんでね、

順番のひとつやふたつ。

細かいこと言うつもりはないんですけどね。

『いそぎなんですみません』なんて言ってくれれば、こっちも

「どーぞ、どーぞ!」つって、

ダチョウ俱楽部の肥後さんと寺門さんをひとりで二役かってでちゃう勢いなのに。

シレっと、立ってんの。

しれっと。

ちょっと、

こっち向いてみなさいよ、

どんなツラか、見てやろうじゃないのー。

って、

ちっとも後ろ向かないのよ、これが。

斜めに、首も振りゃしない。

肩から斜め掛けされたポシェットに、

鬼滅の刃のちいさなぬいぐるみキーホルダーがぷらぷらしてた。

壱の型なのか、弐の型なのか知んないが、

今すぐ、全集中でご主人を、斬ってくれ。

 

 

私の昔の彼氏(仮)の操作が終わり、

一歩前進しました。

オバちゃんは、ポシェットから通帳を取り出しました。

バサっと、数冊。

 

おいおいおいおい、

おいーーーーーー!

ぱっと見た感じ、2冊どころやなかったぞ。

せめて。

せめて、2冊までなら許ーす。

3冊以上なら、もう一回並ぶ思いやりあってもええんでない?

 

ジジジジジ、ジジ、ジジジジ、

ガチャ、ジジジ、ジジジジ、ジジジジジジ…

ガチャ…

 

… 

ん?

記帳?

 

なにもこんな時に、悠長に記帳なんかせんでも。

だーれもおらん時に、

ゆーっくりされたら良ございませんか。

 

あね。

そっか。

私が見えてなかったんスよね。

失礼しやした。

今、オバちゃんの肩、”トントン”なんかしたら、

『ドラッグストアのATM』に幽霊おるって噂になるわ。

 

オッケー。 

今回だけね。

 

目をつぶり、

心を無にし、

そっと手を合わせ、

ひとり仏ごっこをして

時が過ぎるのを待ちました。

 

ふっ。

この音からすると、

通帳4冊あったな。

 

 

目を開けると、私の後ろにも数人並んでいた。

狭い場所なので、L字に折れ曲がり、おそらく3、4人は居たかな。

 

ひとり仏ごっこをしているうちに、やっと私の番が来ました。

後ろに人が待ってるので、急ぐ気持ちはあるものの、

オバちゃんの顔見たさに、出ていく後姿が気になってしょーがない。

まあ、普通、

通帳何冊も記帳して、操作が長引くと、

「スミマセン」なんて、会釈してくれたりする気の利いた人もいたりするけど。

なんせ、私、今、幽霊ですから。

サっと出ていったよね。

 

そしたら、

自動ドアを出たオバちゃんの脇に、子供が、

「ママー♡」

なんつって、飛びついてきたわけですよ。

 

 

ま・ま・・・

 

ん?

今、ママって言いましたー?

年のころ、2、3歳の女の子・・・

さっと抱きかかえて歩く様子が、完全にママでした。

高齢出産の時代だとは言え(なんかスミマセン)明らかに娘と言っても過言ではない背中を、

初見でオバちゃんの背中と判断して、

わたくし、大変失礼、いたしやした。

 

 

そして、自分の後ろに何人もの待ちが居ることをはたと思い出し、

鬼滅ママさんをチラチラみながら、急いで入金しました。 

あわてたので、ティッシュペーパーを買って帰るのを忘れてしまいました。

 

しかし、外の駐車場でひとり待ってた子供もあぶねーな。

なら、横入りして急ぐ気持ちもわかるか、

なんて思いつつ…

 

 

 

 

あのー。

ちょいと伺いますが、

世の中、

横入り、って、

流行ってんの?

それとも、私が流行おくれ?

これ、車だと、あおり運転で、捕まるやつ?

今回は、私が幽霊だったから事故なんか起きなかったものの。

実態あったら、事故ってたよ。確実に。

あぶねーなー。ったく。

 

 

と、そんなことを考えながら帰りの運転中で、

ふと思い出したことがありまして。

 

50年間、まだ誰にも、言ったことなかったんですが。

私の中で、

『元祖横入り事件』

てのがありまして。

なんてゆーか、忘れたい過去って、

蓋をしてしまうと、記憶も薄れてきて、

さもなかったことのような気になってたんですが。

この、鬼滅キーホルダーママさんに会ったおかげで、

『元祖横入り事件』が、ぱっかりと。

記憶の蓋が、ぱっかりと。

開いちゃったわけなのです。

 

 

と、いうことで、

次回は、

続きの後編です。

ぜひお楽しみに。

 

最後まで読んでくださりありがとうございます。

 

 

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