振り返れば奴がいる。
90年代の石黒賢にも負けない青ざめた私が見たモノは
便器いっぱいの鮮血だった。
カラカラと丸くまとめられたトイレットペーパーは、急いで現場に向かう。
『事件は現場でおきている!』と叫ぶ織田裕二の声よりも早く確かめたよね。
前? 真ん中? 後ろ? 今頃生理?ってね。
行ったり来たりと何度も確かめてとうとう犯人をつきとめた。
レインボーブリッジならぬ、レッド尻ッジ!
まさか!?
一番びっくりしたのは私よね。だってまったく痛くなかったし。
そこから検索検索 検索してもしても毎度示されるのは、
「内核痔・外核痔の可能性あり」
「大量の鮮血がでた場合は早めに肛門科への受診をおすすめします。」
え~ 肛門見せるなんてム~リ~
なんて小娘ぶってる場合じゃないと家族にさんざん言われ、週末だったこともあり、数日後の週明けに受診することにした。
地元で有名な肛門科ということもあって、診療時間前に到着したにもかかわらず待合室は患者さんでいっぱいだった。
このおじいさんも・・
このガタイのいい青年も・・
この可愛らしくお若いおねえさんも・・
みなさん持ってらっしゃるのかしら、アレ。
そういう目でしか見れなくなっていて、患者さんの多さにおどろきつつ、
いっぱいいる~!と安心するためにキョロキョロし続けながら呼ばれるのを待った。
初診は診察の前に看護師さんのカウンセリングがあった。
髭剃りあとが青い色白肌の先生は、聞いてた評判とは少し違っていた。
昔から痔の手術と言えば必ず名前があがるこの病院だが、意外に若い先生だった。
なんだか覇気もなく、声も小さい。
机ひとつ挟んだ距離でもうまく聞き取れない。
めいいっぱい近づいて聞き取った、「検査してみましょう」
はい。そのつもりで来ましたよ。覚悟はできとりまっせ。
緊張しながら診察室へ。
看護師さんたちは毎日たくさんの尻や門をみてるので、まあー慣れたもん。
恥ずかしがる方が恥ずかしいくらい。
はい。横になってお尻をだして、向こうむいたまま体をくの字にしてくださいね~。
お尻をプリっとだした態勢に緑の布をかけてくれた。
ほ。
早く来てくれー。
隣の診察室からも、その向こうの診察室からも、ガヤガヤたくさんの声が飛び交う。
天井が筒抜け続きの診察室なので、みんなの会話が丸聞こえなのだ。
となりや向こうの会話を盗み聞きしていると、気配を消した先生が後ろに立っていた。
おどろいてビクっとしたら「力を抜いて楽にして下さい」
きゃーーー! ついにきたーー
緊張で何をされたかよくわからなかった。が、お尻の穴を見られたんだろう、てのは理解できた。
「ステージ3.5から4の内核痔ですね。あと少し外核痔もありますね。」
「大腸検査も進めていきますが、ほぼ手術することになります。」
しゅ、じゅ、つ ? ! !
え。そんなに悪いんですか?
診察が終わり、最初の机にもう一度座る。今度ははじめからめいいっぱい前のめりで。
私のこうもん様の写真を、一緒に覗き込みながら
「そーですねー。ステージ4は手術になりますねー。薬で症状抑えたとしても根治できないので、いずれ手術になります。」
はあ。
「どーしますか?入院の予約して帰ります??」看護師さんが軽快に聞いてきた。
や。ちょ、待っ、えっとー。急…なので、いったん家族と話してきます。
「今、予約されたとしても2か月先になりますので、次回診察のときにでも予約とられて下さいねー。」
2か月先か…
それなら少し心構えができるかも。
処方される薬の説明を聞いていると、先程となりの診察室で、ガヤガヤの正体であろう白衣が出てきた。
色黒で白髪、両腕を後ろに組み、しゃがれた大きな声がこっちへ来る。
年齢はだいぶ上とみれる。
「あーら。あなたははじめてですか!」
カルテを覗き込む
「あらららら。これは手術せんといかん!長く大事に持っとったんやろう!大ーきく育っとる!」
色白覇気薄先生は、真顔で黙ったまま。
反するこちらは、色黒白髪ガラガラ大迫力先生・・・
あ!
噂に聞いたカノ有名な先生とはこの方だー!!
「あっはっは。あなたは、ぢぬしさんて。痔主!それも大痔主よー!!」
今日も最後まで読んで下さりありがとうございます。
次回もお楽しみに
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