私が小学生の頃、しばらくの間我が家で、
母方の祖母と、母の末妹と一緒に暮らしていた時期がありました。
母は、三姉妹の長女、
次女の叔母さんは、結婚して別の家庭で暮らしていましたが、
三女のおばちゃんは、まだ看護学校の学生でした。
私より13才上で、おばちゃんと言うには若すぎたので、三女のおばちゃんのことを、ジュンコ姉ちゃんと、今でも呼んでいます。
一緒に暮らした理由は、ぼんやりとしか知らないけど、
祖母とジュンコ姉ちゃんとの生活は短くて、
気が付くと、いつの間にか、ふたりはいなくなってました。
多分、私が幼過ぎて記憶がうすいのか。
あるいは、仰々しい別れが寂しいのでサラッと、出ていったか。
でも、私は、
祖母もジュンコ姉ちゃんも大好きだったので、
一緒に暮らした楽しい記憶はたくさん残っています。
中でも、
強烈におぼえてるのが、
祖母のせっかちな性格を物語るエピソードです。
昭和頑固オヤジの、なんのこだわりなのか、
朝は、白ご飯とみそ汁と決められていた我が家の朝食が、
パン派の祖母と暮らし始めて、初めて朝食にパンを認めてもらえるようになりました。
小学生の私は、それだけでお洒落な生活をしてるような気になり、
祖母との朝食の時間が、毎日の楽しみでした。
祖母は、トーストした食パンに、
たっぷりのいちごジャムを塗って食べる。
焦げてしまう少し手前くらいがちょうどいいと、いつも長めのタイマーをセットしていました。
カリッ サクッ
いい音をさせて美味しそうに食べる。
私も真似て、ジャムを塗って食べるも、
甘いものが苦手なその当時の私には、いちごジャムが、なかなか甘すぎた。
すると、数日後に祖母が、これならと、
ブルーベリーのジャムを買って来てくれた。
このブルーベリーの酸味のおかげで、
私のお洒落な朝食はなんとか保たれたのである。
加えて、祖母は必ず、
そのトーストを半分に折って食べていました。
ジャムを塗った面を内側にして。
私が、「ばーちゃんなんで折って食べるん?」
と、聞くと、
『折ったらジャムが口の周りにつかんし、早よ食べれるやろ。』
と言っていた。
とにかくばーちゃんの真似がしたい私は、聞いた理由を納得するもしないも、
トーストを半分に折り、かぶりつくだけで満足でした。
ある日の朝食
いつものように食パンを、
ポップアップ式のトースターに差し込もうとするも、
なんだか、狭くて入りにくい。
どうやらオカンが、間違えて4枚切りの食パンを買ってきたらしい。
ばーちゃんも、しかたがないね、と、
そのまま無理やり押し込み、食パンを焼く。
いつものように、ジャムをたっぷり塗って半分に折り、
美味しそうにかぶりついたその時に、
うがッ!!!!
あわあわあわわわ・・・・
なんと、ばーちゃんのあごが外れたのだ。
半分に折られた4枚切りの食パンは、歯形がついたまま皿にボトリと落ち、
ばーちゃんは、うーーとも、あーーとも言えないうめき声を出している。
後ろで食パンの焼け待ちをしていたジュンコ姉ちゃんが、
ばーちゃんの変な声に、とっさに気付き
ばーちゃんの顎やホッペのところを、あーだこーだしてなんとかおさまった。
ばーちゃんは、怖かったのと、ホッとしたので、
ちょっとずつ笑いがこみ上げてきて、
ついには、涙を流しながら、ヒーヒー笑い出した。
私もつられて笑った。
次の日からしばらくの間、ばーちゃんは、
6枚切りの食パンでも、折らずに四角のまま食べていた。
時間がかかるな~と、かなり不満そうだった。
大好きなばーちゃんが亡くなり、もうすぐ6年になる。
最期は、食事を喉につまらせて亡くなった。
せっかちなばーちゃんらしい最期だった。
最後まで読んで下さりありがとうございます。
次回もお楽しみに。
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